昭和十年三月
(鉄道精神の歌について)
白秋は語る。
「鉄道精神の歌が制定された。此の事はこの上も無い歓びである。それに就いて作歌者たる私の意見を申述べよといふことであった。私としては光栄至極のことであり、それだけまた省みて…ただ鉄道と私の関係は今日に初まつた訳でなく、嘗ての鉄道唱歌の審査員の一人であり、私の周囲からもその選に当たったのが一二出てゐるといふ風なので、
鉄道精神についても知るところはあった。…形式の思ひきった自由といふことも一応は考へてみた。
しかしそれよりも汽車のあの駆走状態や音響、車輪のリズムを以て率直にその一行一行を走らすことにしたのである。鉄輪の轟きは一定のリズムを以て連続する。…国鉄、国鉄、国鉄、国鉄の連続音はまたそのカダンスであることは、作曲者山田耕筰氏が微笑して、私との精神の交流を感じてくださることなのである。大家族の二十万といふ言葉は七五調には入れられても、八八調の本文の中へは入れられないので、覆唱として、勢ひよく加へることにした。」
昭和十年三月
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